散らし寿司


我が家の特別な日の特別な御馳走が 散らし寿司である。

慶事があるとか たまに長男の所へゆくとか 年に数回の機会に食卓に上がる。

今回のは 春に相応しい 穴子の散らしであって すし飯に穴子 菜の花 松の実 木の芽 錦糸卵をあしらったものである。 

とても 美味しい!

亡くなった母が最期に 作ってくれたのも 散らし寿司であった。 当時
自分は福山に住んでいて 建国記念日に 広島北部で スキーを楽しむため
峠の実家に帰郷した なので 夕食に寿司を用意してくれていた。ところが 夜実家に着くと 救急車の赤いライトが点滅して 騒然とした空気になっていた。 母が動脈瘤破裂で倒れたのだ。 直ちに 救急車で病院に運ばれ 緊急手術を受けたが かいなく 四十二日後に亡くなった。

翌日 一段落して 病院から帰り 残してくれた散らし寿司を父と共に食したが 砂を噛む様な味しかしなかった記憶がある。

それから しばらくは 散らし寿司をたべても まったく味がしなかった。

早いもので 今年は 母の三十三回忌である。

そして 今 散らし寿司は やはり 我が家一番の御馳走である。