散らし寿司

母が死んで 今年で三十年になる。 二月建国記念日の寒い夜だった。 当時 福山に家族と住んでいた 私は 連休にスキーを楽しもうと峠に車で帰宅した そこで 見たのは 救急車の赤いランプだった。

それから 四十二日後 母は死んだ。 

救急車で病院に 連れて行った後 帰宅して 父と母が作ってくれていた 散らし寿司を食した。 味はまったくしなかった。 砂を食したみたいだったと記憶している。 その父も五年後に死んだ。

今年で 私も母の亡くなった歳から 十年を越えて生きている。もうすぐ父の亨年である。

やっと このごろ 散らし寿司の美味しさを あれこれ考えずに味わう事が出来るようになった。

先日 家人が作った 海老と穴子の入った 散らし寿司は 鳥取の山根窯の重い皿で。 そして 市販の松茸のお吸い物と。 美味しくいただきました。