松本清張記念館

これは すばらしい建築である。 

設計は長野市にある 宮本忠長建築事務所、 なぜ 長野の設計事務所が小倉の建物を設計したのか経緯は知らない。

建家は 東京にあった松本清張の自宅の玄関 応接間 書斎 書庫を内部に再現して それを大屋根でかこい周辺の回廊に 松本清張の資料を展示している。

小倉城止公園に位置し、周辺の景観になじむよう 回廊部分は平屋で低くおさえられ 中央に旧居を収容した形態は 繊細で心のこもったディティールと相まって すばらしい空間を形成している。さらに 奇をてらったところはまったくなく 心安らぐ建築を久しぶりに観て 感動した。ちいさな建物がBCS賞になっているのも当然である。

展示物も旧居が 松本清張の作家生活を具現し、 氏の篤みのある 深い小説の感動が伝わってくる。

似たような施設が 松山にあって これは伊丹十三の記念館だが 展示も建物も松本清張記念館に比すと軽い。伊丹十三はとても才能のある人で好きであるが 人のもつ重さが違う。中村好文設計の建物も軽薄でつまらない。

小倉の人はこの松本清張記念館を誇りにして 良いと思う。

良い空間と良い展示にあって とても良い至福の時間が持てた。