太陽家具百貨店本社

この 建物は竣工して ことしで 十六年になると思う。

某ゼネコンで最後に設計した建築である。宇部市の外れ 小野田に近い 藤曲といった場所にある。

外壁は悪い表現だと トタン浪板で (当時は少し性能がアップされていて アルミを融着した鉄板) ボーダーのみがアルミ板の加工品だった。

アルミは何故だか 手すりのスチール亜鉛メッキ品とともに シンガポールで製作された。 どうゆう 経緯か 現地で製品検査があり 広島空港からシンガポール航空で飛んで 検査そっちのけで 南国を楽しんだ思い出がある。 始めての東南アジアはたのしく お土産を沢山買って帰った。あれからバリ島、タイと訪れたが 最初の国の印象は今でも鮮烈である。バリは戦後、タイは高度成長期前、シンガポールは今の日本と同じであった。

最近 写真を撮りにいったが 宇部工業地帯のあの悪い煤煙の多い空気の中で 外壁はやや汚れてはいたが 竣工時と変わらぬ綺麗な姿があった。

エクステリアは正面玄関上部に アンビエンス(?)なるフランス語(?)の看板が付けられていた(悪い事に金色だ!銀なら良かったのに)以外 原型のまま インテリアも当時のまんまで 全体として 少しは古びている部分もあったが 良く 保存され 活用されている印象を受けた。設計した者にとって とても 嬉しい事だ。

自然の泉の荒廃した風景のあとで この建物に合い 荒んだ心が少し和らいで わずかばかりの 幸せを感じた。