自然の泉

会社を退社して 今年で十五年になる。

退社する 約十年くらいの設計だから あれから 約二十五年になる。

訪ねて 驚いた、 そして 心が痛んだ、 悲しくなった。

建物は竣工すると 施主に引き渡される。 原則として事後は持ち主の自由で どう改造しようと勝ってである。 でも すざましい改悪改ざんだった。

一生懸命 設計にたずさわり デザインした形が見るも無惨な形態をしている。 腹が立って仕方が無かった。

見てみると 建物を空調するための改悪であると思えた。 だが「自然の泉」のコンセプトは即ち「自然であること」で無くてはならない。 自然採光、自然換気は機械空調に比して 夏は暑く 冬は寒い、 が 設計者はその中で最善の努力をし、可能な限りの人に快適な空間と、快適な室内環境を設定したのだ。

やはりなあ!と思う。 見えて来たのは 新興宗教たるものの「まやかし」そのものである。

宗教はとくに興味も関心もないが、この建物の現状を見て そのすべてが虚構ではないかと思う。

自分の魂がどこかに持ち去られてしまったような 淋しい時間であった。