日本の風土に即した屋根材は瓦である。 湿気の多い我が国にもっとも適した材料である。 色的には石州の赤瓦よりは 淡路や菊間の銀鼠色が そぐわしい。 甍の波は日本を代表する 素晴らしい風景でもある。

其の昔 峠の家は藁屋根だった。おしなべて 集落はほとんどが藁の屋根でそれはそれで 統一がとれ 美しかった。 近隣でも一部の大金持ちの家を除いて 瓦の屋根はなかったように記憶している。 しかし 藁屋根は 定期的の葺き替えをしなければならず 順次 瓦屋根へと替わって行った。ここいらの中心地であった廿日市の町家群は既に瓦屋根だった。

何時 替わったのか記憶にないが 我が 峠の旧居も瓦(但し 貧乏だったので 当時安かったセメント瓦)で 葺き替えられた。

屋根の近代化である。 その後は 屋根材も多種多用 乱立混在してきて 色も 赤やら茶やら青やら と支離滅裂となり 日本の美しい甍の風景は完全に破壊されてしまった。

高温多湿の我が国の風土に合い しかも褪色せず 緑の山野と碧の空に合う色は 黒か銀鼠しかあり得ないと思う。

でも もはや 昔の美しい風景を取り戻す事は不可能である。