ダリア

家人が園芸店で 臙脂色の大輪のダリアを勝って来た。 なかなか 見事である。

貧しかった 子供の頃 五十七才で亡くなった母が 庭にダリアを咲かせていたのを思い出した。 庭と言ったものではなく 単に農作業用の土のままの土地であったが 周辺には 若干の植木があり そのそばに ダリアが咲いていた記憶がある。 当時としてはモダンな花だった。

一人っ子だった 私の遊びは その地面に古釘で 絵を書く事であった。

紙と鉛筆すら 不自由していた。

でも 土のキャンバスは 広くて大きくて 楽しかったような気がする。

いまでは 土すら 滅多にみることもなくなり 生活は潤沢ではあるが 心とか 気持ちとかで 失ったものも たくさん あるような気がしてならない。