旅の手帳

幸田 露伴の娘、青木 玉の母、青木 奈緒の祖母、幸田 文の旅に行く際のつれずれを編集した随筆である。 どこかの国の総理大臣は三代目が、此処数年、目に余るほどの「バカ」を発揮し、将来に暗黒の世を展開しようとしているが、こんなのと うって、変わって 四代も続いて、優れた文筆家を輩出している。

最初の文は 端正で かつ気品あふふる文章で構成されている。が 読んで行くと 日記みたいなので 土地の情景の表現は少なく 幸田 文の旅行動のよしなばかり 書いてあるので 少し いや かなり 退屈してしまった。

装幀はクラフト,エヴィング商會(吉田 篤弘、吉田 浩美夫妻のユニット)により 上品に幸田格子をモチーフにやさしく 綺麗に纏められている。

幸田格子とは何か?と調べてみたら これは東京物語など叙情的で美しい映画を作った監督の小津 安二郎の衣装を手がけた 染織家の浦野 理一と言う人が幸田 文のために 作った和服の格子縞のことらしい。

この本のなかに 写真があって 見ると さすが明治の女である、凛とした気品があって その和服姿に一点の隙もない。感心した。