最近 幸田 文の本を読んでいる。 幸田 文は明治の文豪 幸田 露伴の娘で 幸田 文の娘が 青木 玉 その娘が青木 奈緒と四代つずく随筆家である。女系三代の顔形もひっつめ頭で和風である。文章は端麗にして的確 女性の文章とは思えぬ明快さがある。

ともあれ 最近読んだのは「木」である。 いろんな木についての随筆だが柳の木についての事象があった。柳はもともと その形とちがい 荒れ地に最初の育つ たくましい木らしい。 風にそよぐ 柳を見るとやさしいが その印象と異なる。

奈良の唐招提寺の障壁画を日本画家で私の大好きな東山魁夷さんが描いている。 寺の開祖 鑑真和尚(盲目であった)の故郷 中国のどこかの湖の傍にある 柳を描いた モノトーンの素晴らしい作品である。 盲目の鑑真和尚に風にそよぐ 柳の音を聞かせたかったらしい。

幸田 文も東山魁夷も明治の人である。 かれらは 心のなかで凛とした気概があり、それが文章や絵画ににじみ出ている。 美しい心の持ち主である。

最近 NHKのTVで「坂の上の雲」をみているが 「まっこと小さき国がー」の人々が 国の開花期にあたって 貧しいなかで 渾身の努力と知恵をしぼり この国の今日をあらしめたことは感慨にたえない。

それにくらべると 今日の政治家の気概の無さには あきれてしまう!

と すこしばかり 感じた事のあった大晦日の日である。