エニシダ


今から二十年前 イタリアを旅した事がある。 長靴の型をした半島を上から下へと ふくらはぎから 足先へと ベニスを起点に ミラノ フィレンチェ アッシジ ローマ ポンペイ ナポリへと進んだ。 今となっては おぼろげな各地の記憶しかないが 彼の地の野や山の エニシダの鮮やかな黄色だけは強く印象に残っている。 なので 旅したのは多分今頃だったのだろう。

日本では今の時節 様々は花 特に桜の影にかくれて エニシダの黄は見向きもされないが 海外の旅の記憶と照合すると 心 騒ぐものが少しある。

自分は今年 古稀となる。 長年勤めていた会社を辞め 自立してから 今日まで なんとか やって来れたのも 家人の努力によるものが多く 感謝している。これからも エニシダの様な見向きもされない人生が続くとおもうが それはそれで良いと思う。 そして この花のように 野に朽ちる時を待つのみである。