松が原

来年の三月で 父と母の それぞれ二十五回忌と三十三回忌になる。

父の里は 今の大竹市松が原町である。 そこから峠へ婿養子でやってきた。

小さな頃 自転車に竹籠をくくり付け 中に自分を入れて 親子で里へいった 儚い記憶がある。

丘に廃校となった 父の母校があって 立派な鉄筋コンクリート造の校舎の傍らに 校歌を 刻んだ歌碑があった。 ほとんど 人が訪れる事もない校庭に 向かっている。 作者は 奥新 米子さんとあって 聞くと 遠縁の人らしい。 少し 嬉しくなった。 形は失われても 歌は永く記憶に残る。

何となく 遠くから 歌声が聞こえて来たような気がした。