明日はこの地区の秋祭りである。 朝 しめ縄を張り、御幣をつける予定だったが 雨のため 午後からになりそうだ。

春夏秋冬 祭があるが やはり 秋祭がここいら辺では 一番 にぎやかである。 子供達の神輿が街区を練り歩き 太鼓と笛の音が 耳に心地よい。

生まれ育った 山里の秋祭はとても 簡素だった。 幟こそ 部落のあちこちに掲げられていたが 祭らしいのは それだけで 神輿も しめ縄も 御幣も 無かった。 

たまに 山裾の小さな神社で神楽が奉納されていたような記憶がある。

家は貧乏だったので 母が ささやかな祭の御馳走として 香茸の入った散らし寿司を作ってくれた。 なんせ この時期 山の幸だけは豊かで 松茸などの茸類だけは豊富に採れた。

少しずつ 豊かになるにつれ 茸類も だんだんと採れなくなってきた。

いまでは 松茸は絶滅危惧種である。

かなうならば 幼少の頃の母の味を ふたたび 食したいと思う。

貧しかったけれど 幸せだったような気がしてやまない、