アーモンドの花



日本の黎明期 明治の初期にポルトガルの駐神戸総領事として活躍した ビィンセスラオ デ モラエス。 彼は日本と日本人妻 およねを心から愛し また 作家として「日本通信」で 欧州に広く 日本の良さを紹介、妻の故郷 徳島でその生涯を終えた。 この 愛すべきポルトガル人の伝記を小説「弧愁」にて 凛とした文章で新田次郎 藤原正彦 親子が描いている。

春 さくらを妻とともに愛でる情景のなかで モラエスは故郷 ポルトガルの春の花 アーモンドにサウダージ(弧愁)を思い ファドの切ない旋律につのる思いを寄せる場面がある。 欧州の地の果ての地から 日の生ずる国に対して 人と風土に心寄せた感情があふれていて 心を打つ。

この本を読んでいた さなか 散歩の途中で 近くの路地にアーモンドの花を発見した。 家人に確認したら まぎれもなくアーモンドの花だった。
白くて 清楚で桜の花に近い。 ポルトガルの野 一面に咲くアーモンドは日本の桜に遜色なく サウダージの源であったろうと 彼が望郷への心 いだく心情が判ったような気がした。

良い花である。